《第997話》『つかの間の休息』
「はぁ――降参だよ。勝てるかアホ」
「しかしこう言っちゃなんだが、善戦したほうじゃねぇか?」
度重なる衝撃によって土塊となった山の上。人間態に戻ったディアと狼山は、ボロボロの状態でペタリと座り込んでいる。
一方、妾の方はというと同じくボロボロ。だが、全身傷だらけであっても、大地にしっかり立っている、
「ぶっちゃけ、先程の戦いよりも苦戦したぞ」
「うっそだぁー! あいつらの方がアタシらより絶対ヤバいって!」
「いやいや、マジだぞ。あっちはただ物量がおかしいだけだからな。互いで互いの動きも阻害していたし」
「戦いは数が通用するのも、状況次第ってところだな。樹那佐のヤツ、分かっていたのかいねぇのか――」
しばらくして、またすぐに刺客が送られてくることだろう。そしてその刺客とは、恐らく――……、
「呉葉ちん」
「何だ?」
「世界を救えだとかなんとか、アタシは押しつけがましく言うつもりはないよ。ただ、」
「――?」
「ただ、アンタがコーハイの幸せのために出来ることを貫ける。それは願わせてもらうさ」
「――言われるまでもない。安心しろ」
「ほら、狼山! アンタからも、なんか言ってやんな!」
「俺の言いたいことを、先にお前に言われたんでな。どうしようか少し困っているところだ」
「おいおいディア、発言の先回りはかわいそうだろ」
「えっ、唐突に悪者にされんのアタシ!?」
「ははっ、まあ、俺の言いたいこともそう言う事だ。死にたくないのも事実だが、俺達応援することしかできねぇ。だったら、運命を託す相手に好きにやってもらうのがいい」
「――そうか」
空気が変わる。それと同時に、ディアと狼山の姿が薄れ始める。
「っ、二人共――!」
「安心しなって。どうやら、別の場所に転送されるだけみたいだからね」
「ま、遊と共に健闘を祈らせてもらうさ。どこ行ったのか、探し中だがな」
そう言い残して、平和維持継続室の二大エースであり妾の友人は、この場を去った。
――そして、背後に何者かの歩く足音が迫ってくる。
「――来たか。鳴狐」




