《第995話》『タッグコンビネーション』
「やりにくいな――っ、友人であるということ以上に」
妾は地面を数回転がり跳ねてから着地。無数の鬼火玉を作り出し、二人に対して連射する。
名も無き悪魔や冀羅、バシャールや導摩。どれも強力な力、あるいは強力な兵を従えているが、奴らは皆互いのことを知らない。故に、図らずも互いが互いの邪魔をしてしまう事もある。
だが、ディアと狼山は違う。同じ職場で働く仲間で、協力し合って事に当たったこともある。狼山は本来遊という相棒がいるが、それでも強力なコンビネーションを発揮してくる。互いの動きや思考が分かっているのだ。
『オラァッ!』
ディアから放たれた複数の雷撃の線が、妾の放ち続ける複数の鬼火玉を撃ち落とす。そして狼山は、何とその射線の中をくぐりながらまっすぐこちらへと向かってきていた。
「真正面から、とはな――! ならこれはどうだ!?」
鬼火玉をさらに増やし、増やした分を別の場所へ発射と同時に転移させる。その場所とは――……、
「――ッ!?」
「人間離れしているとはいえ、飛べはしないだろう!」
狼山の足元、地面の中。例え下方から直接狙ったとしても、回避されるだろう。ならば、その足元事不安定にしてしまおうと言う事だ。
「まずはお前だ狼山!」
更に空間転移。空中に浮いた狼山の真上へと移動し、拳を構える。
「――フッ」
「っ!」
だが、宙に浮き、こちらに背を向けていながらも。狼山は脇腹の当たりから銃口を覗かせていた。最初からこのように動くのを、まるで読んでいたとでも言うように笑って。
背面撃ち。リボルバー拳銃がマズルフラッシュを焚く。
「妾はそれを読んでいたぞ!」
「何?」
転移と共に、さらに正面に空間の裂け目の展開準備をした。弾丸が放たれるころには、妾の正面に裂け目が生まれている。
弾丸は、空間の穴の先へと消えていった。




