《第994話》『赤い悪魔と狼』
『ァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』
ディア先輩の全身から、真紅の稲妻が迸る。それらは執拗に呉葉を討ち抜こうと狙っている。
外れた雷撃は周囲の樹を焼き貫いていた。その鋭さは、まるでレールガンを思わせる。
「――あいつのあの姿、暴走状態になると聞いていたのだが」
「不思議と、今はコントロールできるんだとよ」
「!?」
ディア先輩の攻撃を回避していた呉葉の背後に追いすがる狼山先輩。気配の一つも感じなかったらしく、彼女は驚いた顔で振り向いた。
「――っ、あァッ!! っ、ぐ――ッ」
「危ねぇな――!」
咄嗟に呉葉は裏拳を放つが、狼山先輩は屈んで回避。一瞬の間に三発の弾丸を放ち、離れながら呉葉に傷を負わせる。
「やはり、対魔弾――ッ」
「急所は、そう簡単には狙わせてくれねぇか」
「お前本当に人間か!? 本当にギリギリのところを狙ってきおって!」
「まあ、当たらなくてもいいか」
『ルォアアアアアアアアッッ!!』
「ぐぬ――ッ」
飛翔し、鋭い爪の生えた両腕を振りかざして呉葉へと飛び掛かるディア先輩。大悪魔の姿の時の彼女の力は、そん所そこらの妖怪や怪物とは比べ物にならない。
「ええい!」
『!!』
悪魔のスピードを上回る速度で懐に潜り込み、拳を握る呉葉。ディア先輩は魔界の王の血を引く半人間だが、その力は鬼神には及ばない。
「悪いが、俺にそんな隙はねぇぜ」
「っ、」
だがその力の差を狼山先輩が埋める。彼は横へ回り込み呉葉の膝を銃撃。彼女は体勢を崩してしまった。
そこへ――……ディア先輩の赤い雷を纏った両爪が振り下ろされる。
「がは――っ、」
強力な悪魔の一撃。まともに受けた呉葉は、大きく吹き飛ばされた。




