《第九十八話》『後のフラグと言う奴ですよ奥さん』
「――それにしても、アンタ何者? 並の妖怪じゃないわよね?」
「あ、ああ、ちょっと、な――」
まあ、先ほどの騒ぎでは周囲の影響を考えて割と加減していたのだが。と、購入した掃除機を抱えながら帰途につく。
「それを言うなら貴様だって、突然重火器を取り出しぶっぱなしおったではないか。一体どこに隠していたというのだ?」
「あれは――緊急だったから、お店の商品を勝手に組み替えて……それに、妖怪とかそう言うの、本来は専門じゃないから本気でやらざるを――」
家電量販店に、商品を勝手に別のモノに変えた引け目を感じているのか、こちらから静波多 藍妃は顔をそらす。まあ、ロケットランチャーやらミニガンやら、レーザー銃やら、どこをどうしたらそうなるのかわからないモノにしてしまったのは、流石に本人的にもマズいと思っているのだろう。
とはいえ、注意が逸れている今がチャンス――ッ!
「ねぇ、ところでアンタ――あれっ」
静波多 藍妃は、妾の視界の下で、慌てふためき始め周囲を見回した。
「ちょ、ちょっと、どこ行ったのよ!? うわっ、ヤバ!? 逃がした!?」
それにしても、テンパりすぎだろう組織のハンター。ただ屋根の上へと飛んだ気の妾を見つけられないとは。
とにかく、ここは一度帰らせてもらうことにしよう。そして、近くにあれがいる以上、なるべく外出も控えなくては。
もうじき牙跳羅が戻ってくる。それまでの辛抱だ。




