《第989話》『平安同窓会』
「さて、次はこの巨大宇宙船だな」
妾は大地にビルを叩きつけた後、そのまま空間転移で浮遊大陸ラ・ムーの上に降り立つ。
その場所は、かつて強化改造を受けた冀羅が妾達と戦った場所で、見果てぬ先まで陸のような土と草のサバンナのような大地が広がっていた。
妾は右拳に力を籠め、足元へと狙いを定める。あの時ダメージを与えた際と同様、ぶち抜いてやろうと考えたのだ。
「……――っ! 後ろ!」
だが突如後方から気配を感じ、後方へと対象を変更。文字通り大地を砕かんとする程の威力の殴打が、それに対して襲い掛かる。
『――……ッッ!!』
「っ、お前は――!」
拳が直撃する瞬間、妾はそいつの姿を確かに見た。
それは――猫のような肢体の下半身に、鋭く強靭な爪を生やした人型の上半身を持つマシーンだった。三つの顔に、三つの尻尾。それは間違いなく――……、
「サンジン・ショコウ――ヤツの差し金か」
一撃で消し飛んだそれ。しかし、見渡した後方には、無数の独鈷と、頭と尻尾が一つずつのタイプのサンジン・ショコウが複数体立っている。
「白鬼。このような運命は、我も正直残念でならぬ」
その中央に降り立つ、一人の男。それは実に懐かしい、平安の時代にて、当時はただの“呪わしい少女”だった妾を救った――導摩法師だった。
「現代によみがえった時のような、妾の姿を借りたものではないのだな」
「ああ。我はあの時のような、記憶の朽ちた残滓ではない。故に、当時の事も覚えているし、それが故に安部晴明に怨みこそあれど、冷静だ」
「ギヒヒッ! 我モイルゾ!」
さらに導摩の背後には、悪鬼羅刹の顔をした“邪気の影”が顔を覗かせている。それはかつて、暴走状態にあった妾の憎悪と闘争本能だ。
「その様子だと、妾の前に立ちはだかる気満々のようだな」
「すまんな。残念ながら、この世界――いや、汝の愛する夫に付加された戦闘衝動を、どうにも抑えることが出来そうにない」
「――そうか。こうして再会叶ったというのに、残念だ」
「だから――」
「――?」
「我らを倒し、汝の愛すべき者を救え呉葉ッ!」




