《第九十七話》『嘘から出たネズミ』
「監視させてもらう、だと?」
「そうよ。後からこっそり後をつけさせてもらうわ」
「そう言う事は普通今ここでいわんだろう!?」
とはいえ、これは面倒臭いことになったぞ。
別に、妾が超・強力で偉大な鬼であることは問題ではない。いや、バレれば問題は起こるだろうか、それに関しては相当迂闊なことでもしない限りはあり得ない。
一番問題なのは、こいつが夜貴の昔から知る「女」であることである。妾の夫が、一途に愛してくれていることはよくわかっているが、それとは別に、ややこしい喧騒になるやもしれないのだ。
特に相手が平和維持継続室所属のハンターであるために、どんな難癖をつけられて退治の名目にされるか分かったモノではない。
となれば、やることは決まっている。
「あ! あんなところで呪われた巨大ミッ○ー人形がヒトを襲っているぞ!?」
「――っ、なんですって!?」
ばかめっ! それはスタコラ逃げるための口実にすぎん! 夢の国の支配者をかたどったぬいぐるみが、こんな家電量販店でヒトに害をなしているわけが――、
「ハハッ! そこの君は僕の絵を無断で手帳に描いていたね? 許されないよ☆」
「どうしてそんなピンポイント気味に現れたんだおのれはァ!?」
しかも、結構ガチ気味にヒトが襲われているのだから質が悪い。妾としては、目撃してしまった以上見過ごすことは出来なかった。というか、アウトだろこれ。
――結局、静波多 藍妃と共にあのいろいろな意味で危険な化け物を、倒したのだった。気をそらして逃げる作戦がパーだった。




