《第979話》『大告白』
「夜貴」
「えっ、呉葉!?」
事務仕事を行っているところに、唐突に呉葉が現れる。付き合わせている反対側の机の前に、空間転移を使って。
なお、今事務所には僕だけしか居なかった。皆仕事や私事で出ているのだ。
「何かあったの? あまり使わないようにするって――」
「まあ、緊急事態だからな」
「緊急?」
「世界の危機――いや、お前の危機と言うべきか」
「…………」
………………………………。
「今ちょっと忙しいから、少しだけ待ってもらっていい? ごめんね?」
「空のアレの事か」
「――まあ、ね」
「その後でまた世界をやり直すのは無しだぞ。妾は、お前と話すために来たのだからな」
「…………」
どう言う理屈か――いや、天才児の仕業で、今の彼女は全ての「呉葉」の記憶を持っているようだった。
そんな彼女は、とても穏やかな瞳で僕を映している。まるで悟りを開いた賢者か何かのようだ。
「会話が今難しければ、アレを打ち落として来るが」
「ははっ、でも呉葉は呉葉だね」
「うん?」
「その力づくなところ」
「妾を脳筋みたいに言ってくれるな!?」
「いや、だって――アレは無理でしょ」
「愛の力は無限大だぞ。謂わば恋愛脳と言うヤツだ」
「随分と破壊力抜群な恋愛脳だね!?」
――うん。短い会話だけでも、彼女とのお喋りは楽しいな。それを思えば、確かに勿体なく思うけど。
「夜貴」
「うん?」
でも、いずれそれも飽きてしまうだろう。無限の時間は、あらゆるモノを朽ちさせる。
だから――そう思ってしまう前に僕は、
「結婚しよう」




