《第972話》『歓迎されないイレギュラー』
「…………」
全ての光景を思い出し、妾は空を見上げる。そこでは、この世界の外よりやって来た存在、ペスタ・エプティと、この世界が突貫で作った化け物が戦っている。
あの概念の外にいる女は、以前の世界で一度妾の前に現れている。他の時間軸で現れていないアレは、この世界のモノではない完全にイレギュラー。
おそらく世界は――樹那佐 夜貴の意識と一体化した世界は、自身の目論見が見当違いの方向に飛ぶことを嫌がり、必死で追い出そうとしているのだろう。
「――その様子だと、全てを思い出した。いや、どちらかというと以前の世界の記憶と統合が完了できたみたいだね」
「お前は――イヴか。どうしてここにいるのだ? それに、遊や……」
「…………」
「――お前誰だ?」
「ぶん殴るわよ!?」
「はははっ、分かっている分かっている。ほんの冗談だ。確か、夜貴に選ばれなかった幼馴染――」
「よし、ロケットランチャー喰らわせる」
無論、忘れて等いない。夜貴の幼馴染、静波多 藍妃だ。ただ、夜貴と親密な間柄だったと聞くと、どうしてもからかわずにいられないのだ。
「頭がすっきりしてるだろう? ボクらで、ちょっと小細工させてもらったよ」
「――前週どころか、それまでの世界の妾の記憶もまた、取り戻してしまったがな」
「おや、これは想像以上の働き。まあ、指定してどうこう、なんてのは流石に困難だからね。そう言う事にもなるか」
目の前の幼女は、相も変わらず幼女らしからぬ表情で肩をすくめて見せた。毎度毎度驚かされるが、恐らく今回以外で以前の週の記憶など引き継いではいない。相も変わらず恐ろしいヤツだ。
「――で、これは一体どう言う状況なのだ? お前たちの言いたいことはある程度想像がつくが、流石に空のアレはこれまでの歴史上一度もなかったことだからな」




