《第966話》『そぉれパシャリ』
「――ともかく、アタシはアレを追うよ。なんか話を聞く限り、物理的な害はなさそうだけどさ」
「精神的な害はうん百万請求レベルだぞ。何が悲しくて、夫以外のヤツにスカートの中を覗かれねばなら、ん。ん、ぬ、む――」
「――また、いつものかい?」
「ああ――いや、む、ん……、」
家々の屋根から路上に降り、妾とディアは先ほどの怪人についての会話を行っていた。まあ、こちらからは情報(?)を渡すのみだが――そうしている間にも、また気配を感じる。
――しかし、突如その気配が霧散する。
「そこのお二人さん。言う事で、と」
「!?」
「なっ!?」
声。気配も何も無く、突如かけられた声に妾達ははっと振り向いた。
そこに立っていたのは、一人の少女。長いプラチナブロンドの髪と、エメラルドグリーンの瞳。漆黒のゴシックドレスを身に纏い、あからさまに異様な雰囲気を放っている。
だが、そんな不気味さとは裏腹に、少女からは何の気配も感じなかった。いや、だからこそあまりにも異質である、と言えるのかもしれない。
そして、その“異様”な女は――……、
「失礼しますね、では」
妾に近づいてしゃがみ込むと、いつの間にか持っていた一眼レフでスカートの中をパシャリと撮影した。
「――は?」
「それ逃げろ、やれ逃げろ♪」
妾は状況を受け止めきれず、固まる。――しかし、次の言葉で嫌でも覚醒することになった。
「アップですネットに、今からこれを!」
「!?」
そんなことを突然宣うから、追いかけざるを得なくなった。




