《第965話》『想定の範囲内、範囲外』
「え、え、ちょ、っと、これ――これも、想定内?」
「多少想定内ではあったけど、まあちょっと面倒臭いね――」
ドローンは、遠く彼方へと吹き飛ばされた怪人をもはや映してはいない。あまりにも遠方へと飛ばされ過ぎたのだ。
「怪人は――無事」
「だけど、この辺り一帯が管轄である彼女が現れたと言う事は、既に盗撮怪人フ・シンシャは目を付けられていることだろうね」
「つまり、さっきと同じ手は使えないってことね。――ちなみに、あのカメラが壊されるとどうなったの?」
「ミクロサイズまで小型化した無数の記憶復元装置が、ガスのように広がって樹那佐 呉葉を包むようになっていたよ。吸い込めば、後は機械が勝手にやってくれる」
「――よくそんなの作れたわね」
もう飽きるほど思っている事だが、この幼女は本当に幼女なのだろうかと、わたしは思う。本当は、わたし達をこの時間軸へと飛ばした技術を実は何度も使って、知識を蓄え続けた何かなのではないだろうか。
「どうするのです、それでは?」
ペスタ・エプティは、興味深げに口元に指をあて問いかけてくる。
「そうだね。手はいくらでも考えてあるが、ここは――」
「よろしいですか、私がやってみても?」
「何?」
流石のイヴも、何を言っているんだという様子で顔をしかめる。しかし、ペスタは満面の笑みを浮かべている。
「何でもできますよ、私? ぜひ協力させてください、なんだか面白そうなので」
「ん、ううん――」
流石の流石のイヴも、この申し出は予想外だったのだろう。顔を更にしかめ、腕組をし、首をひねっている。
――そして、天才幼女の出した答えは……、




