《第964話》『鬼のパンツは白色パンツ』
「天誅!」
屋根の上を跳ねて逃げ回る不審者へと一気に追いすがり、妾は全力で拳を突き出した。
その一撃は、山さえも激しく衝撃の貫通する打撃。まともに喰らえば消し飛ぶ、鬼神必殺の殴打である。そこ、ただ殴ってるだけとか言わない。
「デュフフッ」
「何!?」
叩きつけられる力とは、腕を振るう速度に比例する。しかし、その神速の拳を、丸い不審者は神一重で躱してしまった。
そればかりか、空中で側転し、カメラを構え出す。
「カシャリ」
「!?」
「デュフフッ、しぃ~ろぉ~」
妾は普段、丈の短いスカートは穿くかない。と言うか、1000歳でそれは流石に痛々しいと思うので、足首までの長さの品のあるモノを穿いているのだ。
だがこいつは、逆さまになることによって、そんな長いスカートの下のそれ向けてフラッシュを焚いたのであり――……、
「いい加減にしろォッ!!」
ぶっちゃけ、その技術をもっと他の事に使えばいいのに! という思いを妾は抱く。
その想いと共に、カメラごと吹き飛ばす妖気を――……、
「デュフ? デュッフゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!?」
突如物理法則を無視した動きで吹き飛んで行く怪人。カメラを抱えたまま、その姿は山の向こうまで弾き飛ばされてゆく。
「呉葉ちん! こんなところで何やってんだい!」
声に振り返ると――そこには、クラウディア・ネロフィ。平和維持継続室戦闘員きっての実力者であり、友人でもある赤毛の女が、刀を肩にかけて立っていた。




