《第963話》『安直ネーミングの怪人たち』
「――何、アレ?」
「不審者だよ」
「違う。盗撮怪人フ・シンシャ」
ドローンが撮影している映像を、樹那佐宅より少し離れた公園で、わたし達は見る。
そこではあの鬼神が、まるまると太った黒ずくめを追いかけまわしている。その黒ずくめの怪人はというと、スーパーボールのように跳ねて彼女から逃げ回っていた。
そして、それを操っているのは他の誰であろう、思誓 遊である。そう言えば、「怪人トンマロク」と、あの怪人の容貌はよく似ている。
いわば、太ったトンマロクが、フ・シンシャであると言えるだろう。――双方共に、ネーミングが安直だ。
「さて、さっき言った通り、適度なところでカメラを手放してやってくれ」
「ん」
イヴの指示に、遊がこくりと頷いた。現在、計画は順調に進んでいる――らしい。
わたし達が直接対面して怪しい行動をすれば、自分達の行動が世界の意思から逸脱したモノであることがバレかねない。それは、世界の意思が呉葉に全てを託しているが故、彼女に注目し続けているであろうという推測から来ている。
そこで、遊の操り人形を使い、事を成そうというのだ。
曰く、樹那佐 呉葉はカメラを破壊するだろう。しかしそのカメラには、破壊されることで発動する仕掛けが施されており、それが、元の世界でのことを思い出させる切っ掛けになるのだという。
「――遊、遊」
「――?」
「折角だし、もっとおちょくってみようか」
「了解」
「あんたら真面目に救う気あんの!?」
――本当に、大丈夫なのだろうか?




