《第961話》『何色?』
「――電話?」
妾は固定電話の着信音に気が付き、それを置いているリビングへと移動する。
特に誰かからかかってくる予定はない。こう言う場合、ほとんどが宣伝とか怪しい勧誘とかばかりなのだが、かと言って違う可能性もあるので、取らないわけにはいかない。
「もしもし」
「…………」
「――?」
取った電話から、声が返ってくる様子は無い。通話中を示す無音だけが受話器から響くだけで、反応が返ってこない。
まさか、これが噂に聞く無言電話――……ッ!?
「……――お嬢ちゃん」
「――っ」
などと思っていたら反応があった。野太い男の声だ。
だ、誰だこいつは? 聞いたことのない声――、
「今日のパンツは、何色?」
「どうして貴様なんぞに答えねばならんのだァ!?」
あまりにも唐突な、あまりにもふざけた通話に、妾は受話器を叩きつけるように置いた。何だコレは、ただのイタ電ではないかァ!
「このっ、イライラしている時になんなのだ――っ! どこの馬鹿だ、ふざけお……、」
苛立ちを隠しきれず、思わず独り言まで出る始末。
しかし、そんな最中。またもや着信音が鳴る。
仕方ないので、妾はまた受話器を取った。
「今度は何だ――っ!」
「ぐへへへへ、白」
「なっ――!?」
今日の色を当てられ、しかもそれは先ほどの人物の声であり。流石の妾も寒気が走った。
「――っ!」
その時である。窓の外――家の敷地より外、塀を乗り越えて、何かが光を反射したのは。
「あれかァあああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
謎の盗撮魔。妾は電話を切り、即座にそいつの確保へと向かう。
この妾を! この家を盗撮しようなど! 断じて許せるものではない!




