《第958話》『正真正銘狂気の鬼』
「そう言うわけで、樹那佐 呉葉との接触を図ることとしよう。平和維持継続室の中枢サーバをハッキングしたところによると、あのアホ鬼は、日常的に周囲を攻撃し、周囲に損害を与えているらしい」
「――何やってんのよあの鬼神?」
「どうやらそのデータによると、“狂鬼姫”は頻繁に何者かに見られているように感じている操舵」
「何者って――何者よ?」
わたしは、二之前 イヴへと至極真っ当な疑問を投げつける。
と言うか、平和維持継続室が格納している情報を持ってくるとか、おかしいとかヤバいとか、あらゆる驚きと危機を表す言葉を集めても足りないくらい滅茶苦茶なことをやっている。
「少なくとも、何者かが観測された、という記録はないみたいだね。つまり、“狂鬼姫の妄想”だ。いわゆる、今の世界における狂鬼姫は、まさに狂気の存在となっているようだよ」
「――そんなのでよく今まで討伐されなかったわね。前の世界の時は、不可侵条約を結べると言う事で、どこかなあなあになってたわけだけど」
「ぶっちゃけ、この辺りはガバガバだよ。どうやら世界が始まり直したと言っても、今までの部分をほぼそのまま引き継いでいて、そこに無理やり上書きをしたようにも見える」
つまり、話の流れからして、世界は自身を、夜貴を殺させるためだけの“設定”を施した、と言う事なのだろう。――しかし、
「そんなんで殺されて満足なの――? 明確な殺意を持って殺させる、というよりは……」
「うん。いわゆる事故当たり的な方法を狙っているとしか思えない。そんなのでいいのか、という疑問は至極当然――だけどまあ、相手は生き物と定義していいものなのか曖昧だしね」
それとも、と言ってイヴは目を細める。
「他に何か、狙いがあるのか――」




