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《第二話》『震える鬼』
「す、すまん夜貴、大丈夫か!?」
「う、うん――」
大穴の開いた家の壁。その向こうには、別の家の壁がまた穴をあけてしまっている。
「何かが――何かが、いた。そんな気がするのだ」
「また――? ちょっと、見てみるよ」
僕は壁の穴から頭を出し、外を覗き込む。
「ま、まて夜貴、危ないぞ――っ」
「んー、んん――?」
きょろり、きょろりと。周囲を見回してみる。しかし、外に誰か居る様子はない。いつもの静かな夜で、まさしく平和そのものだった。
「大丈夫、誰もいないよ」
「い、いや、夜の闇に紛れて誰ぞ潜んでいるかも――」
「大丈夫だよ、心配しないで。落ち着いて」
「あ、ああ――」
僕は呉葉の頭を優しく撫でる。小柄な体躯に違わず、とても小さく思える。
呉葉は――とても、臆病な女の子だ。




