《第944話》『収束する世界』
「さっきも言った通り、僕は樹那佐 夜貴でもある。いや、どちらかと言うと、この周回においては樹那佐 夜貴と同化した、と言うべきかな。勿論、僕自身が世界の核である情報は消去してね」
「…………」
「――でも、だから、かな。だから、ただひたすら消えて無くなりたい、終わりたいという気持ちから、せめて最後は呉葉の手で、という気持ちが湧いてきたんだ」
それは夜貴と、この世界の意思の想いが混じり合ったが故の気持ちなのだろう。
妾との時間があって、今の夜貴の思惑があるのだ。
「っ、それはあまりにも勝手が過ぎると言うモノだろう!?」
「幻影――」
幻影は、夜貴の狂鬼姫へのイメージから作られているためか、本物、現在の妾と比べてどこか冷淡で、落ち着いているところがある。
そんなヤツが、今回の一件に限っては声を荒げることが妙に多いと感じる。
「お前のことを、こいつがどれほど想っているのか、本当に理解しているのか!?」
「う、ん。分かってるつもり。僕はこの世界そのものだけど、全知全能じゃない。それでも、分かってるつもりだよ」
「だったらなおの事酷なことを要求していると――! いや、それ以上に自身諸共消そうとしていると、どうして気が付かない!?」
熱くなる幻影。しかし、それを見た夜貴は――疲れたようにため息をついた。
「無限の時を経験していないから、君はそう言えるんだよ。――でも、確かに我儘だ。じゃあ、少しばかりやり方を変えるとするよ」




