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《第939話》『決め切れぬ心』
「フン、そんなもの。最初から分かっておるではないか」
「――?」
鳴狐は、馬鹿馬鹿しいと鼻で笑い言い捨てた。
「貴様が迷いに迷いに、迷いに迷いに迷いに迷いに迷いまくってるから、この体たらくなのではないかえ!」
「迷っている、だと――? 妾は既に決心を……、」
決心をした。その筈だった。自ら愛する者を手にかけるという、その覚悟を。
「言っておくが、余は正直まだ完全に状況を把握しきれているわけではない。じゃが、だからこそその念は嫌でも伝わってくるのじゃ」
「!」
今の妾と、狐の相違点。言われてしまえば、驚くほどすとんと心の中に落ちたような気がする。
妾は、未だに迷っているのだ。夜貴との今までの想い出が、“終わらせる”ことを躊躇させている。
結局妾は、あの時自宅前で息巻いた時とまるで変わらなかった。次は無いと宣い、そして次がやって来た今でもまた、やはり躊躇している。挙句、心のどこかで自分が敗北すれば、とさえ思っている。
――駄狐ごときに諭されるのが、気にくわないが。認めざるを得なかった。




