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《第936話》『不意の一手』
僅かな事、だと?
「――何も分からぬ、くせに……ッ」
自身の落ちる先と、鳴狐の跳んだ先に、空間の穴を作る。
駄狐側の穴を崖――岩壁の前へ。妾側の穴は、その背後を取れるように。
「勝手な事ばかりを――……っ、」
当然、背後を取れる互いの立ち位置となる筈。だが、それを見越していたのか、鳴狐は壁に激突するでもなくこちらを振り返ってくる。
だが、今のヤツとの力差では、ここからの一撃を防ぐのは困難である筈。故に、妾は空間ごと狐を殴ろうと――、
こいつ、何故笑っている?
「抜かすなと、そう言いたいんじゃろう?」
背後から声――ッ!
「ならばそれ以上、情けない姿を曝すなァッ!」
前にも、後ろにも。身体を90度だけ回転させ、空間を殴りつける。
歪んだ空間から発生する衝撃が、そこに居た二人の鳴狐を襲い。周囲の地面ごと吹き飛ばす。
「ッ!?」
地中から、突如衝撃が巻き起こり。妾は宙に飛ばされた。




