《第933話》『反射的な怒り』
気がつけば手が出ていた。気がつけば、殴り飛ばしていた。
「……――ッッ、」
吹き飛んだ駄狐が、宙を舞う。見る者によっては、まるでロケットのようだと称するであろうその跳び方は、しかし空中で突然ピタリと止まる。
「な、に――っ、を……ッッ!!」
空中に、まるで壁があるかのように宙返りして足をつける。そしてどこからともなく巨大な宝剣を取り出すと、まっすぐに妾を睨み付けてきた。
「してくれんじゃァあああああああああああああああああああああああああッッ!!」
レーザービームのような勢いで、まっすぐ突っ込んでくる駄狐。その顔には怒りが隠されもせずに表れている。
――怒りたいのはこちらの方だ。
「好き勝手言いおって。何も知らん、何もわからんくせに」
「!?」
空間転移で、駄狐の真横に移動。
「ふざけるなよ鳴狐」
「ぎぐぉ――ッ!!」
そのまま、妖力を乗せて蹴りつける。まるでラケットで弾かれたボールのように、斜め下の地面向かって飛んでいく狐。
大地に激突。大きく地割れが出来上がった。
「よかった、だと? この世界や自分自身の危機だとも知らずに、能天気だな。だから貴様は駄狐なのだ」




