《第929話》『妾のもの』
「な、に――?」
何が起こったのか分からなかった。スコープを覗き、今まさに弾丸を撃ち込もうとしたその瞬間、ライフルの銃身が弾け飛んだのだ。
「貴様が、次なる滅びの使者か」
「!?」
背後から聞こえたその声。それには聞き覚えがある。いや、あろうがなかろうがどうでもいい。私の工作は完璧だったはずだ。姿は見えない、気配も装置の補助使って消していた。ライフル含め、私を知覚する術などなく。つまるところこれは、本来あり得ない事態である。
「もはやこれ以上隠れる意味も無い。狼山の射撃と今の爆発で、貴様の位置はバレている」
狼山!? あの何の力も持たない人間に、何故私の居場所がバレた! 異能持ちならいざ知らず、只の人間にどうして――、
「さて、夜貴を狙っていたことは間違いないだろうが。悪いがアレは妾のだ」
「世界の滅びを同じく望む以上、私が行おうと同じではないか――!」
「…………」
隠しもしない殺気が、私の後ろで静かに燃えている。
「――ここで手を引くのであれば、見逃してやろう。妾とて、無駄な殺生を行うつもりはない」
「ハッ、どの道皆辿る運命は同じだというのに、奇妙なことを言う」
「…………」
「…………」
沈黙。互いの間には、風の音だけが通り抜けていく。
私は――……、
「死ね、狂鬼姫ッ!」
拳銃を懐から取り出し、振り返――……ッッ、




