《第922話》『ジジババ集会』
「っ、」
剣奉から迸った雷。妾はそれを横に飛んで回避する。通り抜けた稲光は、段差ごと大広間を真っ二つにする。
「――何をする」
「何するってそいつァ決まってんだろがぃ、狂鬼姫よぉ」
アロハシャツのジジイは、雷で形成された大剣を肩にもたれかけさせ、首をかしげて見せる。
「ちょっくら一発、平手打ちで目ェ覚まさせてやろうかと思ってな」
「随分と破壊力のデカい平手打ちだな。部屋が使い物にならなくなったぞ」
「たった二人のジジババ集会だ、問題ねぇだろ」
剣奉は大剣を横薙ぎに振り回してくる。リーチは見た目よりもはるかに伸びるそれは、その場から使い手が動いていないにもかかわらず、数歩距離のある妾へと迫りくる。
「ちっ――お前が問題と考える状況が、そもそも今まで一度も無かっただろうが」
妾は妖力を帯させた素手で受け止める。拮抗するが、剣奉は驚かない。むしろ、ニカリと笑っている。
「無くもねぇなァ」
「――ほう?」
「例えば、今がその時よ――!」
剣奉はもう一方の手に、稲光の剣をもう一本出現させる。
その剣は、刀身を叩きつけるように妾の頭上から降ろされる。
「今日の貴様は、一段と意味が分からん、な」
妾は空間転移で距離を取り、剣奉の後方へと足を降ろす。先ほどまでいた壇上は、見るも無残に吹き飛んでいた。
「そうかぃ? 一度お前さんの胸に聞いてみるこったな」
「何?」
「儂は他の奴ら同様、何も事情を聴かされちゃいねぇ。けど他の奴らと違って盲目的じゃねぇ。そんな儂が、今お前さんをどう見てると思う?」
剣奉は稲光の二刀を構え、妾を振り返った。
「ただの脅された弱者だ」




