《第913話》『信じるか信じないかは、あなた次第』
「なるほど、確かに。妾達が信じられるか否かは、話の真偽以前の問題だな」
何故か自信満々に胸を張る呉葉´。――その後ろで俺は、ちらりと横目でこの部屋の壁を見た。
「確かに、こんなことするヤツをいきなり信じろと言われても困るわな」
「やかまし。だが、そのように疑ってくるのは最初から分かっていた」
「ほほう。ならばどうします?」
平野は興味深げに口角を上げる。周りの中年・老年たちはそんな二人の様子を、どこか怯えながら見ていた。
「え? 何もせぬが」
「――はい?」
だから、皆そろってアホみたいにポカーンと口を開けたのは言うまでもないことだった。勿論、俺もディアも。
「当たり前だろ。そもそも敵方に現在の妾がいる以上、そちらにはどちらがどちらか判別がつかない。そんな状況では、どのように妾がモノを言ったところで、その信用を100%にすることは不可能だ」
「――なるほど、確かにその通りです。疑おうと思えば、我々はいくらでも疑えます。その永久的なループを脱する程の信ずる証拠を提示するのは困難です。しかし、それでは……、」
「だな。だから妾は、これから起こりうる事態を述べるだけに留める」
呉葉´はそう言って樹那佐を抱き上げた。そして、そのまま空間の穴を開いてしまう。
「お、おい、話をつけるとか言ってそんだけかよ!?」
「いや、話はついたぞ。妾は情報を与えた。それが真実か否かは、じきに証明されるだろう。――ああ、もう一つ。狂鬼姫の仕掛けてくる手について述べておくとしよう」
「む――」
呉葉´は既に空間の裂け目へと片足を突っ込んでいる。もはや、ここに止まる意味は無い、とでも言うように。
「近々、この国中の至る所で妖怪達が暴れ出すだろう。お前たち、平和維持継続室の人員を可能な限り出し尽くすためにな」




