《第911話》『代理統括者』
俺達の前には、如何にもと言った様子の偉そうな男たちが並んでいた。
スーツを着た、小太り気味のヤツや、眼鏡をかけたヤツが、テーブルを盾にするように立っている。部屋が部屋なだけに会社の重役のような奴らだ。
「単刀直入に言おう。妾が、世界を滅ぼそうと画策している」
「――は?」
「おーい、なんかこう、妙に作ったような言い回しすると要らない誤解うけるんじゃないかーい」
「えー……雰囲気は大事であろー」
ディアにそう言われると、呉葉´は不満げに唇を尖らせた。
なお、意識は有りはするものの、ぼーっとしたままの樹那佐は椅子に座らせられている。――さっきより、酷くなってないか?
「――まあ、アレだ。ここにいるこの妾は狂気鬼にあって狂鬼姫にあらず。そして、元々存在する本来の狂鬼姫が、事をしでかそうとしているのだ。アンダスタン?」
「……………」
重役のような奴ら――呉葉´曰く、現在平和維持継続室を纏めているらしいという男たちは、訝し気な表情を浮かべている。
――それにしても、こいつらが俺達の上司だったのか。呉葉´曰く、元々は本来統括していた者と他職員との間の中間管理職的立場に当たるらしいが。
「――それで、どう言ったご用向きで? 狂鬼姫の偽物さん」
その中の一人――グレーのスーツにサングラスをかけた男が、口を開いた。他のおっさんらに比べると若く見え、しかし彼らの何倍も重い気配を感じる。
「お、おい、平野。こいつは妖怪で、そいつら二人は裏切り者だぞ!」
「いいではありませんか、宮田さん。わざわざ直接出向いてくれたんだ、話くらい聞いて差し上げても」
平野と呼ばれた男は、そう言って不敵な笑みを浮かべる。
「何の用も無く、我らの前に姿を現すような愚かな連中ではない。と、私は分析しますが」




