《第909話》『敵陣突入!』
「軽く撒けたな」
「だから最初からやってくれっての!」
呉葉´の空間転移によって、平和継続室の連中から逃げる事に成功した。案の定と言うべきか、容易くそれは成ったのだが。
「何も、妾とて何の考えもなく行わなかったわけではない。向こうとて、妾が空間転移を使えるのはわかっているはずで、それに対する策も用意してあると考えていたのだ。それで行き先を考えたり、罠が無いかを確かめるために時間がな」
「一理あるように見えるが、本当か――?」
状況は話している暇などなかったので仕方ない。ホンモノよりもやりたい放題な性格が伺えるため、どうにも言葉が信じきれないが。
「と言うか、ここはどこだい?」
ディアはそう言って、周囲を見渡した。
今いる場所は、床や壁、天井がコンクリートでできた、後は扉が二つあるだけの殺風景な部屋。古くさい電球が部屋の中を照らし、心なしかひんやりとした空気に包まれている。
「ここか? ここはな」
扉が空いて、黒服達が現れる。どれも武装し、いかにもやる気満々な奴らばかりだ。
「っ、ちょちょちょ、ちょっと待て! こいつらは――と言う事は」
「いえーす、いい直感だ。大事にしろよ」
そう言って、呉葉´は不敵な笑みを浮かべる。
「ここは平和維持継続室、その本部だ」




