《第907話》『鬼神と呼ばれた立場に与えられたこと』
「――グダグダ考えていても意味はないな」
妾が今考えることは、今度こそきっちり終わらせること。そしてそれを行うのは世界の理から外れた妾でなければならず。それを他の誰かに任せることはできない。
そもそも、「樹那佐 夜貴」が世界の核となっているのは、此度の一週にてそう定められているため。他の運命の巡りの中では、夜貴は普通の人間に過ぎない。
ならばなぜ、夜貴が存在しない時代に「安部晴明」と言う人物へ、世界の楔の役割が与えられたのか。
結局その力は妾に与えられ、楔が消えたと世界が考えたためか名も無き悪魔のような者にその役割が与えられた。
世界の仕組みを知った今でも、それを妾は知らされてはいないが。きっと世界とやらも実はそう狙いすましたように事象を起こせるわけではないのかもしれない。
「あるいは、妾――『狂鬼姫』に託されたとみるべきか。ならば、やり方も決まってくるか」
妾は携帯端末を取り出し、登録されている中から名前を一つ選択する。
「零坐、妾だ。今時間はいいか?」
かつて狂鬼姫出会った時。その下で妾の意思を伝達する役目を与えられていた男へと、電話をかける。
今、夜貴の周りを守るはディアと狼山、そして幻影。単純戦力で考えれば、今の妾では大して苦戦することはないだろうが、いずれも油断のならない者達だ。
ならば、チャンスは増える方がいい。




