《第906話》『逃げながら――』
街のど真ん中で爆発が起こる。その規模は一般家屋一つを木っ端みじんにする程で、道路にクレーターが生まれた。
深夜で薄暗い街灯に照らされた道が、まるで太陽が出現したように明るくなり、俺やディア、樹那佐を抱えた呉葉´はそこから逃れるように駆ける。特に普通の人間である俺なんかが喰らえば、ひとたまりもない。
――というか、
「街中で何て異能を振り回しやがる! 無茶苦茶しやがって!」
「我々はあなた方の生死を問わぬ捕縛を、最優先事項として命じられています。多少の犠牲はやむを得ません」
カオル以外にも、他の職員が様々な武器や異能を滅多やたらと撃ち込んでくる。
そのどれもが、街の被害を気にしている様子は無い。仮にも一般市民を守る使命を帯びた者達である筈なのに、こんなことがあっていいのか。
「っ、全く、こうなったら全員纏めて叩きのめしてやろうかね――!」
「やめろ! そんなことをすれば、さらに収集付かなくなるぞ!」
「このまま逃げ続けるのも面倒だろうに、そいつの提案は悪くないと妾は思うのだが」
「お前はお前で空間転移とか使えばいいだろ!?」
正直頼る気が起こらないというのが本音だが、このまま走って逃げるよりもはるかにいいだろう。そう思い、仄めかすが――、
「何、ちょっと考え事をな」
「逃げ切ってからした方がよっぽどいいだろ!?」
予想だにことを言われてしまった。妖怪の考えと言うものは、正直理解しがたい。
「――で、何考えてるのさ呉葉ちんの偽物!」
「あん? いや、何。どうしてあやつと樹那佐 夜貴なのか、と思ってな」




