《第904話》『知り得ぬ者の身辺状況』
「呉葉ちん、一体どうしちまったんだ――?」
「さて、な」
ディアの至極真っ当な言葉に、呉葉´は不機嫌そうにそう答えた。どことなく本人とは違う呉葉´だが、こう言うところは似ていると感じる。
「一つ分かるのは、今度会ったらヤツは……狂鬼姫は敵と言う事だ」
「おいおい、そう断言するのは早いんじゃねぇのか?」
「妾としてもアレは妾自身。少なくとも、冗談を言っていないことは分かる」
断言する呉葉´。だが、何度も行動を共にした俺やディアは、そう簡単に納得できない。
「有体だけど、何か事情がある筈だよ。そうじゃなきゃ、呉葉ちんはあんなこと言わないだろ」
「確かに、事情はあるかもな。というか、事情無くしてあのようなことを言うヤツでもあるまい。実際、今のあいつの顔は――」
と。呉葉´は、そこで言葉を切った。
「――お客だな」
「見つけましたよ、国家反逆者達」
声。その声は、とても聞き覚えのある、男とも女ともつかないものだ。加えて、複数人他に引き連れている様子もある。
「妖怪と結託し、何を企んでいるのか知りませんが。その企てもここまでです」
カオル・クルチャトフ率いる平和維持継続室の職員が、俺達三人へとあからさまな敵意を向けてそこに立っていた。




