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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二十三章
904/1022

《第903話》『積み重なりし年月』

 ――できなかった。


 夜貴を、手にかけることが。できなかった。あの瞳で見返された時、決めた覚悟がものの見事に砕かれた。


「…………」


 そうして逃げ出して来た妾は、今はかつての住処に戻ってきている。


 しもべ達が他の場所に住めるよう取り計らい、今となっては人っ子一人いないこの巨大な屋敷。時代が移り変わるごとに増築し、その時その時の建築様式を取り入れてきたこの住居は、いわばキメラ家屋と言っても過言ではない。


「――どうしてこんなところに戻ってきたのだろうな」


 自分でもよく分からない行動に、自嘲の笑みを浮かべる。おそらくだが――夜貴と敵対することになった今、戻ってくる家と言えばここだから、だからだろう。と、自己分析をしてみる。


 入口の戸に手をかけてみる。当たり前だが、錠がかかっている。長い付き合いたる家に拒まれた気がして顔をしかめる。

 勿論、そんなことなどある筈が無いのだが。


「…………」


 空間転移で腕だけ通し、反対側から鍵を開ける。そう複雑なわけでも無い扉の錠は、いとも容易く開放された。


 埃っぽい空気。冷たい薄暗さ。そこに何者の気配もなく、今の妾はただの一人だった。


 ――夜貴。


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