《第900話》『決心』
「これが世界の真実だ、同胞よ」
「…………」
気がつけば、妾の前には名も無き悪魔。そして、触手の気色悪い化け物。
「厳密に言えば、力を受け継ぎし者、と呼ぶべきか。だが、例え本来の運命から外れた生まれ方をしても、汝は吾と同じ宿命を帯びし者」
「…………」
「汝もまた、吾と同じくして。この世界の意思によってこの世界を滅ぼすべくして生まれた。吾は当初こそ自覚してはいなかったが、この世界と繋がることでそれを理解した。汝も、同様であろう?」
名も無き悪魔、触手の化け物は空間の裂け目からその身を覗かせている。そして、その奥から漏れ出る世界を形成する一部――……、
「汝ならばよく理解できたはずだ。吾が虚言を吐いてなどいないことを。特別な術で汝を惑わせたのではないと。その身で、魂で。感じた筈だ」
「――ああ」
妾は、偉そうに高説を垂れる名も無き悪魔へと歩を進める。
「さあ吾が同胞よ、吾と共にこの世界を――、」
「断る」
攻撃を当てやすい位置へと立った妾は、妖気によって生み出した地獄の業火を、名も無き悪魔へと叩きつけた。
「お、ご、ォ――……ッ!?」
「使命は理解した。貴様の言っている事も真実であるとわかった」
炎は化け物を射貫き、名も無き悪魔を炎で包む。燃え盛る火炎が、枯れ行く木々の落ち葉のようにその肉は燃え落ちていく。
「ならば尚更、貴様にその役目を渡すわけにはいかない」
死にゆく悪魔の身体から、力を全身で吸い上げながら一人呟く。
「夜貴に。核に。この世界に終止符を打つのはこの妾だ」




