《第891話》『ハリボテの城』
「ククッ、だがその程度では陥落せぬ」
深々と背後から斬り裂かれ、傾ぐ毛むくじゃらの傷が、癒着する。ぼろぼろと、肉片を幾らか落としながら。
「フン、寄せ集め故に斬られた箇所を捨てればいくらでも繋げる、と言うことか」
「よくわからんが、ならばみじん切りにすればよいだけじゃ」
「それを吾らが許すと? 二度同じ轍を踏む吾らではない」
その言葉を奇術師が紡ぐと、その周囲から再びカラスが出現した。加えて、ローブが変わらずの俊足で、触手を蠢かせてくる。
「芸が無いのう」
「ならば妾は」
「「初めから何も踏まぬ」」
妾は鬼火玉を周囲に拡散。駄狐はローブの動きを見切り。
双方ともに破砕を完了する。
「――!」
続けて、妾は戦いの余波で横倒しになった歩道橋を放り投げる。
「むんっ」
その歩道橋は毛むくじゃらの片方に残った剣で破断させられる。だが、動きの隙を駄狐が付いていく。幾多の剣撃が、毛むくじゃらの巨大な肉体を削り飛ばしていく。
「っ、よもや紛い物とお友達がこれ程の連携を見せるとは――!」
「連携? 何を言っている」
「余らはただ、好き勝手に暴れておるだけじゃが?」




