《第884話》『銀色の巨人』
現れたるは巨大な影。宙に浮く、銀色の毛に覆われた毛むくじゃらの化け物。
「なるほどこれは――残骸を集めたものか」
倒したはずの名も無き悪魔共が一様に集まったその存在。人型を形成し、崩れ落ちるビルから眺めたその巨大な姿は、体長はゆうに50m程もあるだろう。
「吾ら分身は、一つの存在が無数の力と魂を集め、そこから生まれた存在。それをまた一つに戻すことなど、造作も無き事よ」
その頭頂部に降り立った奇術師は、妾を見下ろし不敵な笑みを浮かべた。なるほど、あれらの攻撃はただこれを創る時間を稼ぎたかっただけか。
「ハッ、何が一つに戻すだ? ただ死体をより集めただけではないか」
よく目を凝らしてみれば。銀の毛並みの下に元の名も無き悪魔、その分身の残骸共の姿がそのまま残っている。
蓮〇ラが苦手な者が見れば間違いなく怖気が走るだろう。検索するなよ。絶対だぞ。もし興味本位で見て気分を害しても、妾は責任を持たぬ。
「ぶっちゃけ趣味の悪いことこの上ないぞ? こんなグロテスクなスイミーで、妾を倒せるとでも――」
空間の裂け目から二本の巨大な剣が飛び出した。死体の塊が、それをそれぞれの腕に装備した。異様な気配が、渦を巻く。
「――っ!」
「ああ、思っている」
二本の片刃の剣が、同時に妾へと向けて振るわれた。まともに喰らえばタダではすまないと、用心に用心を重ねて可能な限り障壁を固める。
二振りの剣が、妾の守りを打ち砕いた。




