《第882話》『終わらぬ妨害』
妾の前には、奇術師、ローブ、ドレスの三体が立っていた。
そのうち奇術師とドレスは渋い顔をしており、それはそのまま今の状況を示している。
「――流石、我が同胞の偽物なだけある」
「…………」
「これ、ヤバいヤツとちゃうん?」
周囲には、最早数えきれない程の奴らの残骸が転がっている。この様子からして、残るはこやつらだけなのだろう。
「もはや、勝負は決したと言っていい。妾の道を妨げるのは諦めてはどうだ?」
「…………」
それぞれにどれくらいの能力差があるのか知らないが、目の前の三人もそう大差無いと推測できる。
そして、この三人を片付けるのにそう手間はかからないだろう。だが、「妨害」と言う点に関してを死に物狂いで行って来れば、妙な手間取り方をしかねないとも、妾は考えていた。
ちぎっては投げ、ちぎっては投げを何度も繰り返したが。それが成立したのは、奴らの統率が大したことなく、互いが互いの動きを阻害していたからに過ぎない。自由に動きすぎているのだ。
だが、三人が奇跡的な連携を見せてきた場合。少々時間がかかる恐れがある。これでも、奴らはそれなりに強いのだ。
「あんなこと言うてるんやけど。あちし、従っといた方がええと思うわ」
「愚かなことを言う。汝は悔しくはないのか? アレは、我らが同胞の名を語る偽りの存在なのだぞ?」
「別にあちし、そこまで思い入れあるわけちゃうし」
「――所詮、分身は分身か」
「あんたもな。あんたのばあい、本体の意識がそのまま反映されとるわけなんやけど」
――何やら話合っているようだが、いっそこの間に抜けるなり叩き伏せるなりした方が早いのではなかろうか。妾は何やら話しこんでいる名も無き悪魔共の動向を伺いつつ、空間転移の準備を行おうとする。
「させぬよ」
「む」
開こうとした穴から、ステッキの先端が飛び出して来た。軽く回避するが、やはり感づいてしまうらしい。
「まだ、吾らの相手をしてもらってはおらぬ」
「本当に、しつこいな」




