《第881話》『とある世界は滅びを望む』
「虚言ここに極まれり、だな。妾が夜貴を殺すために存在しているだと?」
白い女の子は鼻で笑う。僕を銀髪の女性との間に入って庇う彼女の背中は、とても頼もしい。
「貴様が何の目的があって妾に囁いているのかは知らぬが、そのような妄言で揺れると思っているのか?」
「滅びが、世界の望みだとしても?」
「もはや口を利いてやる意味も無いな――!」
駆け出した白い女の子の姿が、その先の空間の裂け目へと消える。
「はァッ!」
銀髪の女性の背後に現れる女の子。振るった拳は、しかし相変わらず目に見えない障壁に阻まれてしまう。
「元気の良さは汝の美点だが、同じことの繰り返しは芸が無いな」
「同じかどうか、それを試そうと言うのだ」
「む――」
銀髪の女性の周囲に、幾つもの小さな空間の裂け目が出現した。
「行け!」
裂け目から、黒々とした炎の塊達が飛び出してくる。
それらは女性に殺到。その全身を、爆炎で覆い隠してしまう。
「火力がてんで足りんぞ同胞」
「当たり前だ。ここで全力を尽くせば夜貴が危険だし、ご近所迷惑でもある」
「む――」
粉塵が明けたとき――、
「あ、あれ? 二人は――」
白い女の子と銀髪の女性の姿は消えていた。




