《第879話》『世界の中心点』
「核――?」
銀髪の女性は、僕を見てはっきりとそう告げた。
だが、言っている意味がまるで分からなかった。
「汝、己では気がついていないらしいな。汝はこの世界における中枢が人格を得た存在。汝こそ、世界存亡の要なのだ」
銀髪の女性は、またもや髪を鎌にして振り上げる。そんな彼女の顔は、嬉々とした様子が浮かんでいる。
「妄言垂れ流しマシーンめ、無駄に壮大なウソを吐いて無駄な混乱をもたらす腹積もりか!」
「同胞よ。この話、汝とて部外者ではないぞ?」
真正面の空間転移から殴りかかる白い女の子。そんな彼女の拳を、案の定片手で銀髪の女性は止める。
「だから、貴様ごときと一緒にされるのは心外であると――!」
「吾は不思議に思っていた」
「ッ!?」
銀髪がほどけ、無数の髪が白い女の子の全身に絡み付く。ただのそれだけで、彼女は動きを封じられてしまったようだった。
「そもそも、吾は吾。唯一無二にして、他に並び立つ存在などあるはずもなき意志だ。その吾が、汝にだけは同質の何かを感じていた」
「貴様の、勝手な思い込みだろう――!」
白い女の子の全身から、黒々とした炎があがる。だが、銀色の髪はその艶を失わない。
「いや、吾は見た。故に、妄言ではない」
銀髪の女性は、親しげな笑みを女の子に投げ掛けた。
「汝もまた、吾と同じ使命を得し者なのだ」




