《第866話》『悪魔への捧げもの』
「聞けぇええええええええええええええええい貴様らァッッッ!!!!!」
樹那佐の嫁さんが、戦いを繰り広げる二人を見上げ声を張り上げた。宙で制止するディアも、そして崩れたビルの上で仁王立ちする狂気鬼も、空気どころか大地を振るわせんばかりの大声に振り向いた。
「まずはディア!」
『ギグ、ルゥ――ッ、』
「こいつを受け取れッ!」
『!?』
樹那佐の嫁さんが、自身が作ったであろう空間の穴から何かを取り出し、それをディアへと投げつけた。
人間には到底不可能な投擲速度で飛来するそれ。ディアは腕を振り上げると、それを弾き――、
飛ばすことなく、キャッチした。
『ギ、あ、あアア、ああ、ア、あ――?』
「遠慮するな、妾のおごりだ」
それは、一缶税込み211円のア〇ヒ、スーパ〇ドライだった。あ、普通に飲み始めた。
『んぐっ、んぐっ、んぐっ、プハァ! 久々に飲んだけどクるねぇッ!』
あ、戻った。姿変わんねぇけど。
「というかアレで戻るのかよ!? いや、マジでか!? 俺の今までの心労をどうしてくれるんだ!?」
「それからニセモノ!」
この釈然としないというか。冗談でも選択肢にあげたものであっさり元に戻されたっぽい事に対する俺の不満の声を無視し、樹那佐の嫁さんは狂気鬼の方を向いた。
「何だ、興が醒めるな一応本物?」
「フッ、これを見ても同じことが言えるか?」
そう言って樹那佐の嫁さんは、また空間の穴から何かを取り出した。
「うん? この妾を誰だと思っている。妾は古今東西に名だたる鬼神、狂鬼姫ィあああああああああああああああああああああああああああッッ!!?」
傲岸不遜な態度を取り続けていた狂鬼姫が、叫び声を上げた。




