《第865話》『エンドレス・デストロイ』
「何、とは。見ての通りだが? おっと」
『ギ、ギギ、グ――ッ』
地上に降りた狂鬼姫に、ディアが飛び掛かる。真紅の雷を纏って振り下ろされる両腕は、いわゆる結界的なモノに阻まれていた。
「狼山、いったい何がどうしてこうなっている!?」
「短く纏めると、名も無き悪魔との戦いで傷ついて、そのせいで暴走してるんじゃないかと思われるディアを、あいつが襲撃した」
「ククッ、襲撃とは人聞きの悪い、な――!」
狂鬼姫は俺にそう返すと、空間転移からディアの背後に移動し、その背中を強かに殴りつける。
地面に叩きつけられるディア。しかし、すぐに体勢を整え再び飛び掛かっていく。
「妾は少し、悪魔とやらの力を試したくなっただけだ」
「これだけ周囲を破壊してまでやることか貴様!」
樹那佐の嫁さんが言う通り、辺りは瓦礫の山となっていた。流石にここまで被害が広がれば、騒ぎにもなろうと言うモノ。比較的初期の破壊で人々は既に逃げ始めていたため、人命に関しては見た目程の被害はなさそうだが――……、
「そうは言うがな? こいつは恐ろしく強いぞ。妾くらいしか、その強さを楽しめぬのはあからさまに勿体なかろう?」
「あいも変わらず身勝手なことを! おい狼山、名も無き悪魔の方はどうなったんだ!」
「逃がしちまった――正直、空間転移のせいで追いかけることもできなかった」
「っ、一先ず、今はこいつらを止めることが先か!」
しかし樹那佐の嫁さんも、すぐには飛びこみに行かない。大妖怪と言われる存在でさえ、何の考えも無しに飛び込めない様子を、表情が物語っている。それは、自身が戦いに加わることによる被害拡大も視野に入っているせいかもしれない。
だが、程なくして。元・鬼神が舌打ちをする。
「こうなれば致し方無し、か――ッ」




