《第860話》『人間vs大悪魔』
内外共に強がっては見せたものの。
「く、ぐあ――っ、」
その強力な力。堅牢な防御。そして迅雷のごとき素早さ。どれを取っても圧倒的な悪魔モードディアの能力の高さに、出せる手が見つからない。
しかしながら、以前見た時は少々危ういながらも正気を保っていた。今暴れているのは、一種の防衛本能のようなものだと推測できる。
「だったら、尚更被害を出させるわけには行かないじゃねぇか――!」
あいつがもし自らの力で人を傷つけたと知ったら、きっと落ち込む。いい加減に見えて、そう言うところはマトモなヤツなのだ。
「防衛本能か。傷を治せば元に戻るか――?」
だが、俺にそんな魔法のようなことは不可能だ。いっそ、安い発泡酒でも飲ませりゃ元に戻ったりはしないだろうか。
『グァアアアアアアアアアッッ!!』
「しねえよな、しないだろうなぁ――!」
放たれた雷を防ぐために、弾丸を一発使ってしまう。身のこなしだけでは、流石の流石に限界があった。
そんな苦し紛れの回避を行う俺にも、ディアは容赦なく襲い掛かってくる。
『ギァアアアアアアアアッッ!!』
「っ、しまっ――………」
地面が砕かれ、身体が宙に浮いてしまった。腕の降り下ろしをかわしたはいいものの、そのせいで足の自由が利かない。
迫り来る、次の攻撃。避けられる手段はこの状態では持っていない。
俺はその瞬間、確かに目前に現れた死を実感した。
「悪魔の強さとやら、妾にも試させてくれ」
突然、ディアが吹き飛ばされ――その声が響いた。




