《第858話》『大悪魔の力』
『アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』
「くっ、ディア! 落ち着け!」
咆哮と共に、周囲に赤い雷撃が走る。さっき吹き飛ばされた際に放たれなくて助かった。――建物の壁をベニヤ板を殴ったみたいに容易く穴を開けるあんなモノ、食らったら木っ端微塵だ。
「――っ、と言うか、まずこの場所自体がマズいだろ!」
炸裂し続ける雷撃に、建物は破壊されてゆく。その状況を危険と判断し、俺は急いで屋内へと脱出した。
ビルから距離を取ってすぐ、それは崩壊した。
「――っ、く、ディア……ッ」
粉塵が明けて、その無事を確認するや否や。しかし同僚の女は、そんな建物の倒壊などどこ吹く風と言った様子で力を暴走させている。
「どうする、どうすればいい――!?」
こんな状態の同僚を放り出して逃げる、と言う選択肢は勿論無い。しかし、ただの人間である俺には、その鎮め方などまるで見当がつかないのだ。
「あるいは昏倒させるか、だが――」
今俺の手には、悪魔に有効な弾丸の装填された拳銃がある。だが、これは名も無き悪魔ように開発された代物であり、効くのかどうかわからない。
それに、仲間に銃口を向けるなど――……、
「だが、止めなきゃもっと悲惨じゃねぇかよ!」
様々な思考を巡らせ、俺は判断する。
何とかこいつで意識を落として、鎮めて見せる、と。




