《第822話》『鬼の乱入』
「呉葉ちん!? どうしてここに!」
「夜貴から連絡があってな。――ところであいつ、何故増えている?」
コンクリートの地面が破裂し、その粉塵から現れたのは樹那佐の嫁だった。相も変わらず、そのパワーは鬼そのものだった。
一方の悪魔二体。どうやら呉葉の攻撃を直撃することなく逃れた模様。路地裏を形成するビルの壁、およそ5mの位置で張り付いている。
「吾と類似せしもの、吾と遊びに来てくれたか」
「こちとらトイレ掃除の真っ最中だったのだ、そのような理由で来るほどヒマではない」
「すまねぇな――」
「気にすることは無い。――この状況、なかなかに笑えない状態のようだしな」
樹那佐の嫁は重症の遊に顔をしかめると、再び悪魔二体を睨む。
「そう言う訳だ。友を傷つけた罪は重い。よって、そのまま無抵抗に消し飛ばされるがいい」
「――何だ、遊びに来てくれたか訳ではなかったか」
しかし悪魔は、鬼の殺気に唇を尖らせて返答する。
「ならばここらでお開きとしよう。吾もまた、吾自身のために忙しい」
「っ、待て! 貴様の都合など聞く気は――!」
呉葉が鬼火を投げるが、それより一手早く、悪魔達は居なくなった。
「ちっ、相変わらず逃げ足の早い」
「――呉葉ちん、マジで助かった」
「それはいい。それよりも、」
呉葉は遊に視線を向ける。
「今は、遊の傷と――もうひとつ、確かめる事がある」




