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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二十三章
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《第819話》『二つ』

「――なんて、な」


 俺の目の前まで迫って来た触手は、数センチ先でぴたりと停止する。完全に固まったそれは、僅かたりとも動く様子を見せない。

 ――何故なら。名も無き悪魔の身体中を、目に見えない程の細やかな糸ががんじがらめに拘束しているためである。


「助かったぜ遊」

「…………、のろま」

「そう言ってやるなよ、よけきるなんて無茶ってモンなんだか、」

「俊也が」

「っ、俺かよ!?」


 確かに、相手の速度に対応しきれなかったのは事実だが! それこそ無茶を言わないで貰いたい。こちとら、普通の人間である。

 ちなみに、遊の方も動きに対応して捕縛したわけではないだろう。俺とディアが前衛後衛と言った体裁をとっているようで、実質前に出て注目を引いていたのだ。遊はその間に、周囲に自身の糸を張り巡らせていた。


 通過するだけで絡まるそれは、気がつけば動けなくさせている。一度強く捕らえたそれは、容易く切断することはできない。


「さぁて、観念してもらおうか」

「――――――――」

「――せめて何か喋ってくれねぇと、こっちが不安になるんだが。ディア、こいつどうする?」

「どうするも何も、討伐指令が出てるわけだしねぇ。あー、でも今後魔界の方から何者かが来ないとも限らないし、サンプルとして生け捕りにした方がいいかも。ちょっとばかり聞いてみるよ」

「――――――――」


 ディアはスマフォを取り出して電話をかけ始める。研究部署当たりだろう。


「思ったより呆気なかったが、平和的に収束するならそれに越したことはねぇな」


 名も無き悪魔は、目を見開いたままの無表情で、そして何も喋らない。こう言うところまで、聞いていた話とは全く異なっている。

 捕縛している糸は、まるで吊っているようで。今の悪魔の姿は、まるで人形のよう――


「――っ、まて、もう一体は結局どこへ、」


 行ったのか。そう、周囲を見回そうと振り向いたその時だった。


 遊の身体が、深々と斬り裂かれたのは。


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