《第816話》『増える悪魔』
探知のポイントを目指し、俺とディア、そして遊は街の細い路地裏まで足を運んでいた。
「――おいおい、増えてんじゃないかいコレ!?」
「どした、乾燥わかめか何かか?」
ディアがスマートフォンを見て素っ頓狂な声を上げるので、俺はそれを覗き込む。
ちなみに、わかめとかどうとかはまるっきり冗談である。今ディアが見ているのは、恐らく探知網の状況だろう。
だが、増えてるって、まさか――?
「――もう一匹新しく現れた、ってことか?」
「それは無いね。言ったろう? 突貫だから、あいつ一匹しか探知できないって」
「じゃあ、こいつが意味してるのは」
「そのまま、ヤツが増えたってこと、だよ」
信じられないことだけどね、と、ディアは付け加える。この様子から考えるに、悪魔だからとて、増えたりすることは常識外であるようだ。
「――俺、対人間専門だったんだがなぁ」
「人間離れした身体能力してるヤツが何を言うんだい。武器さえ整えりゃ、その辺の妖怪程度くらいなら瞬殺するクセに」
「んで、今回はその武器がある、ってか。便利屋になったつもりはねぇんだが――」
ホルスターに収納されている拳銃に、俺は手を添える。ディアも、スマフォをポケットにしまって刀と自身の拳銃を、いつでも抜き放てる構えを取った。
直前まで見ていたスマートフォンには、ヤツの存在が近づいてきていることが示されていた。名も無き悪魔が、向かってきているのだ。
「しょうがねぇ、丁度2on2だ。必要に迫られりゃ、専門外のことでもやってやるさ」
「現代ガンマン――カッコいい……」
「褒めてもパフォーマンスは向上しねぇぞ?」
程なくして、先の曲がり角からそいつは現れる。
たった一人。




