《第814話》『対策』
「皆、聞いてくれ。感知網にヤツをひっかけられるようになった」
狼山先輩が悪魔と遭遇して一週間。外出から戻って来たディア先輩は、事務所の扉を開け放ちそう言った。
「と言っても、正真正銘ヤツしかひっかけられない応用性もクソもないトッカン物だけどね」
「現状、それで充分だけどな。武器の方はどうなってる?」
「拾った魔力殻だけじゃどうにもならなかったみたいだけど、アタシの武器の再解析を合わせて、特攻効果のありそうなものが出来たよ。量産の目処は立ってないみたいだけど」
「ディア先輩の刀って、元は魔界の剣だったんでしたよね?」
「あっちでの剣を、こっちのヤツに対しても特攻が効くように改良してもらったブツだよ。こっちの妖怪とか怪物相手じゃ、ただ刃渡りデカいだけの刃物だったしね」
世界が異なるから、込められた異能の効果も対応できる範囲が違う。今のディア先輩の刀は。そしてそこから力を得る銃の弾丸は、両世界の異能に対して抜群の破壊力を誇る。
「呉葉ちん並みの超暴力があれば、なくても何とかならないんでもないだろうけどね」
「超能力みたいに言わないでください」
「――しかしそうすると、まだまだこっちから手を出すのは難しいか」
「量産が出来てないから、そう思うかい?」
「ああ」
「――ところがぎっちょん」
「あ?」
「くすねてきたよ。はいコレ、狼山」
そう言うと、ディア先輩は胸の谷間からスピードローダーを三つ取り出した。リボルバー式拳銃の装填を素早く済ませられる器具に、弾丸が六つはまっている。
「こんだけしかないけど、アンタ持っといてよ」
「おいおい、いいのかよ?」
「温めておきました! って言いたいところだけど、こっそり持ってくるにはこれしかなかった」
「まあ、誰も胸の谷間に腕突っ込んでまで検査しようってヤツはいないわな」
「美女の谷間から出したんだ、感謝しな」
「生暖かくてなんかヤなんだが!?」
感知網に対悪魔が適用されるのは、今日の午後17時以降かららしい。
少しずつ、脅威を追い詰められている。このまま、事がスムーズに済んでくれればありがたいけれど。




