《第812話》『違う世界の特異な存在』
「何? そいつが例のアレだったのか!?」
事務所に戻って来た狼山先輩が、任務中にあった出来事を話すと、僕らは間違いなくそれは件の悪魔であると理解した。
「――つまり、あの時逃がしちゃマズかったわけか」
「いや、アンタの拳銃は普通の拳銃だし、効き目があるかどうかは怪しいよ」
「わたし――」
「遊でも厳しいと思うよアタシは。むしろ、そのままどっか行ってくれてラッキー、とさえ思う」
そう言いながら、自分のデスクに腰かけて、ディア先輩は缶ビールを一口。職務中にお酒飲まないでください――って、これ何回思ってるんだろう僕。
「その一方で、探す任務も課せられてるわけだが」
「この手の組織の上の奴らは、アホが多いからねぇ」
「わ、わたくしもその一員になるのでしょうか――」
「えっ、あ、所長居たのかい?」
「ずっと居ましたよォ!」
「所長は中間管理職みたいなもんだろ。俺も他の奴らも、あんたがそんな奴じゃないことくらい分かってるさ」
「そもそも存在自体が忘れられかけるけどねぇ!」
「しまいにゃ怒りますよォ!?」
「ともかく、だからこの件自体を上に報告することも、正直アタシは嫌だったんだ。けど、警戒を促しておかないと、尚更ヤバいことになりかねない」
実際、野放しにできない相手には変わらない。呉葉が聞いた悪魔の目的が本気なら、むしろ早急な対応をすべきである。
「じゃあどうするんだよ。見つけても倒しようがないなら、結局変わらねぇぞ」
「まあそう焦らなくとも、じきに対策は打てる筈さ」
呉葉との戦闘で得られたデータは、今現在本部が、全力を尽くして解析している。
「悪魔だって、生きてるんだ。生きてるんなら、殺せる筈だよ」




