《第809話》『まるで爆弾でも炸裂したかのような』
「すまんな、殴り始めは気が付かなかった」
「まあ、分からないのは仕方ないよ。事前情報も少ないし」
ボコボコ(文字通り)になった周囲を職員達が片付ける中、僕は呉葉と件の悪魔について話す。
――それにしても、通りが酷い有り様だ。呉葉なりにそれらには配慮していたらしく、人や建物には被害が及んでいないようだが。代わり道路が犠牲になっている。
「でもどうして戦う何て言う事態に?」
「買い物を終えて、いざ帰ろうとしたらヤツが屋根の上に立っていて。跳んだと思ったら車体が凹まされた」
「ああ――」
要するに、事故とかそう言う事が原因である。で、さらに推察するに、謝罪なく逃げた悪魔に殴りかかった、と。
「しっかし、こりゃァアタシら絶対怒られるわ。監督不行き届き的な意味で」
現場を廻っていたディア先輩が、頭をかきながら戻ってきた。狂鬼姫が出ることは、禁止されていたところにこうなっちゃったからね。
「むぅ、ホントにスマン」
「――いや、確かに宜しくない事態だけど、全部が全部ってわけじゃない」
「何?」
呉葉がきょとんと目を開く。僕も、ちょっと意外な展開だ。
「何せ、魔力データが取れそうだからね」




