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《第808話》『煙を掴んだような』
「貴様と妾が同じ? ギャグにしてはあまりにもナンセンスだな!」
妾は鬼火を両手に湛え、悪魔へと仕掛ける。
接触は禁じられていると言われているらしいが、遭遇してしまった以上。そして、より多くの人々に被害をもたらしかねない以上、ここで野放しには出来ない。
その思想は危険そのもの。ここで放置すれば、その身勝手な行動を振り撒かれかねない。
「これは想定外な返答。或いは、突然すぎたが故に決めきれぬか汝?」
「今! ここで! 消し飛べ!」
鬼火を纏った一撃が、二撃めが、三撃、四撃、五撃と続く攻撃が地面を爆散させる。
「む――」
だが、ふと違和感に気がつき、攻撃の手を休める。
「何? どこへ行った」
いつの間にやら、悪魔の姿は消えていた。消しとんだのではなく、すり抜けでもしたかのように居なくなっていたのだ。
「呉葉!」
「む、夜貴」
そこへ、妾の愛する男の声がする。妾が戦っている気配を察知されたのだろう。
――それにしても、この妾からまんまと逃げおおせるとは。




