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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二十三章
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《第800話》『闇の翼』

「文明的な光瞬く、美しい街並みだ」


 摩天楼の頂上に、銀色の髪が靡く。漆黒の夜の元、星々の光を凌駕する都会の輝きを興味深そうに見下ろす女は、赤い瞳を細めてそう言った。


「吾の生まれた場所に、このような文明的で美麗な景色はなかった。黴臭く、それでいて存在意義すら無い雑多なガラクタの山。それと比較すれば、こちらの方がはるかに感動的だ」


 足場ギリギリの場所に立つその女は、氷の彫刻に命を与えれば、丁度このように整った美しさが出来上がるだろう容姿をしていた。その身を闇色のコートで纏っているその様子からは、斬り裂くような気配が放たれている。

身長の程はかなりの長身で、しかし細身。地上に光が満ちれば消えてなくなるような儚さと、それに相反する、重い闇が影を落とす存在感を兼ね備えた雰囲気を纏っている。


「このまま、永遠にこの場で眺めていようか。終わりがあるからこそ、光景は美しいもの。そして――それに終止符を打つのがまた、美しき太陽の光であるとは、人間界はあらゆる美しさが調和を成して在るのだな。これに歓びを感じて震えたのも何度目か」


 一陣の風。コートの裾は翻るが、女は決してバランスを崩すことなく不安定な場所に立っている。


「決して、魔界では目にすることのできない光景――」


しばらくそこに居て、日の出の光が地平線の彼方より顔を覗かせる。まるで夜を支配していた街の明滅を飲みこんでいくように、地上は恒星の煌めきに飲み込まれていった。


「故に、その調律されたこの無限に続く絵を、吾が断ち切るのも、また美しい」


 女――魔界より来訪せし悪魔は、摩天楼の頂上より飛び降りる。


「その時、世界はどのような芸術を見せてくれるのか。今から、それが楽しみでならない」


 漆黒の闇は――光を受けてなお、暗闇であった。


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