《第七話》『浮気などありえない!』
「よおっ、後輩っ!」
「いっだァッ!?」
組織の事務所で、僕は思いっきり背中を張られた。
「っ、先輩! 毎度毎度やめてくださいよォ!?」
「あはははははっ、アンタの背中ががら空きなのが悪い!」
僕の後ろで、ヒトに仇名す者共を倒すことを生業とする上で先輩に当たる、クラウディア・ネロフィが大爆笑していた。
長い赤毛に高身長、豊満な体つきをしている彼女は、今日も露出多め――と言うよりは動きやすさを重視した服装をしている。
彼女は、グリーンの瞳をおかしそうに歪めながら、椅子に座る僕の首に腕をひっかけてくる。
「アタシが出張してる間、どうだったよ~、元気してたか後輩くぅ~ん」
「く、苦しいから、いや、それ以前によからぬモノが当たってますからァ!?」
「うぅん? 照れてるのォ? 可愛い後輩めぇ、うりうりぃ~」
嫌いというわけではないのだが、先輩は僕のことを男と思っていないんじゃないかな? 気道が、主に女性特有の脂肪の塊で締め付けられて苦しい。
――と、そんなところへ、早朝ゆえにヒトの少ない事務所の扉が、バンッ、と開いた。
「夜貴っ! 弁当を忘れ、て――?」
「…………」
「はろー、呉葉ちーん」
「…………」
「――えっ、と、くれ、は……?」
「貴様あああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
弾ける鬼火。吹き飛ぶ机。鮮やかに回避する先輩。――そして、外れた故に舞い上がる僕。
意味が分かりません!