表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二十二章
799/1022

《第797話》『ドン☆』

「さあ、出来たぞ! 年越しそばだ!」

「うわぁ、麺が見えない」


 ドン☆ と、テーブルの上に置かれた、呉葉作の年越しそば。黒い器に盛られたそれは、しかし蕎麦と言う名前が実感できない程具が盛りだくさんだった。背丈が妙に高い。


「今年最後の料理だからな、全力で張り切ってみた」

「すごい、海老天が直立してる――ちなみに、具材は何が入ってるの?」

「ふっふっふ、食べてみてのお楽しみ、だ」


 そう言われ、僕は早速手を付けてみる。まずは海老天。何とこれが二本でしかも大きい。衣がサクサクで、作りたてだ。蕎麦の汁が軽くしみて味と触感がすごくよい。

 それがもたれかかり直立させているのは、かまぼこに油揚げ、甘辛く煮た牛肉、ふわふわの卵焼き、そしてなめこ。そこに大根おろしととろろがかかっており、おまけにしいたけも二つ。その上にねぎがまぶされ――なんかもう、スペシャルだった。


「ちなみに、その下にはごろっと大きな鳥のもも肉も入ってる」

「蕎麦と言うより、具の方がほぼメインみたいになってる――っ」


 どうだ、恐れ入ったか! そんな声が聞こえんばかりのしたり顔。ただ、文句をつけるわけではないのだが――、


「えっと、ちょっと量が多すぎない?」

「――あ」


 どうしてそこで今理解したような顔を!


「そ、その――張り切って作ってたら止まらなくて、な」

「やっぱり」

「しかも、よく考えたら肝心の蕎麦が伸びてしまうではないかァ! 妾何やっとるんだぁ!」


 テンション上がって、他のことを忘れてしまうのはよくある――の、だろう、か……?


「そ、その――食べきれなかったら残していい、ぞ……?」


 先ほどまでものすごく調子がよかったのに、一気に呉葉は意気消沈してしまった。

 気落ちした様子は、明かりを消した提灯のよう。――けれど僕も、呉葉のそんな姿を見ていたくはない。


「ん、大丈夫だよ。折角張り切って作ってくれたんだし、もったいない」

「だ、だが、夜貴は小食だったろう――? それを忘れてどかっと作ってしまうなど、」

「今年もありがとう、お疲れ様呉葉。来年も、よろしくね?」

「――っ!」


 確かに多くはあった。だが、僕は呉葉が作ってくれた年越しそばを残すつもりなど、万に一つもなかった。


 ――しばらくお腹が苦しかったけど、これが僕の貰っている愛情だと思えば。とても嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ