《第794話》『いたって平和な一日』
「夜貴! 夜貴!」
「今日は何が起こるのかな!?」
いつものパターン。慌てた様子で呉葉が僕を呼び、そしてアクシデントが起こったり、時には直後に起こったりする、日常の恒例行事。ちなみに、今日はスマフォでニュースを確認していた。もう少ししたら寝るところだ。
僕がこう返すのは、呆れているからではないことをここに明記しておく。かと言って楽しみにしているわけでもないが――もはや一種の家族間コミュニケーションの気がある。
「聞いて驚くなよ! 聞いて驚くなよ!」
「二度言うほど大事!?」
「大事だとも! 聞いて驚けッ!」
三度目言いつつ僕の前で両拳を握り、興奮気味に話す白い鬼の奥さん。こんなポーズだと、ホントにもう、見た目相応の女の子そのものである。
「今日は――……なんと何もないッ!」
「えっ!? え? え――?」
いつものように驚こう、と思って空振りした。
「いやいや、きっとこの後何かが起こるんでしょ」
「そんな気配すらまるでないのだ! 一大事! めっちゃ一大事だぞ!? ウルトラ一大事!」
「い、いいんじゃないの? 何も起こらないなら――」
平和が一番。僕としては、正直そう思うのも事実。……一方で、やっぱり何かあってほしいと思う矛盾した気持ちも無くはないけど。
「わ、妾、どうすればいい――? 妾、何をすればいいのだ?」
「何もないなら何もしなくていいと思う」
「妾に死ねというのか!?」
「どうしてそんな解釈に!?」
――どうやら、うちのお嫁さんは毎日何かないと落ち着かない愉快なヒトのようです。




