《第791話》『どうぞどうぞどうぞ』
「夜貴」
「何?」
そろそろ夕食時が近いころ。リビングのソファで待っていると、台所の方から呉葉が呼び掛けてくる。
ちなみに、びっくりさせたい、とのことなので、僕は手伝ってはいけないらしいのだが――、
ちなみにちなみに、呉葉はサンタ衣装で今料理をしている。ミニスカートが、見ているこちらとしてはやや寒そう。今は上から割烹着着てるけど。
「ついに――ついに、妾はやってしまった」
「あはは、いつもの呉葉のパターンだね。こういう時な決まって、ぼんっと大きなものが飛び出すんでしょ」
「ぐむ、流石に三年も一緒に居るとパターンが読まれてしまうのか」
「僕の予想だと、ついに七面鳥を買ってしまった! かな?」
「ぐむむむむっ! 読まれ過ぎる程読まれている――っ」
悔しそうに唸る呉葉。――まあ、と言う事はホントに七面鳥を仕入れてきたわけで、普通にびっくりなんだけど。しかし、いつも同じパターンでは面白くないだろし、いつも驚かされてばかりでは流石に悔しい。
「――むむぅ、ネタ晴らし前にバレてしまった以上、仕方あるまい。ちょっと、外に出てみてくれ」
「えっ、外?」
台所で割烹着姿の呉葉が、それを脱いで椅子にかける。僕はどうして外、と思いつつも、彼女に伴われ外に出た。
「うぷっ、寒――」
「まだ12月の真っただ中だからな。今から、こいつを調理する」
「え?」
夜の暗い中、僕は目を凝らして呉葉が見ている先をよく見てみる。
庭のど真ん中。鉄製の檻の中、何かが入っている。
それは長い脚で、長い首。体高2mにも及ぶ、その鳥は――、
「クェーッ!」
「ねぇ呉葉、これ――」
「七面鳥ッ!」
「ダチョウ! これダチョウだよ呉葉!?」




